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気の向くままに、イメージのままに、曲を聴きながら、携帯で書いたりしたものとか。 玉砕は覚悟のうち。
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自分とは、何なのだろう。
何時、何処で、何故。
この運命を与えられたのか。

違う色をたたえた目だけが知る、束縛された魂の連鎖。

***

まだ小さかった少女にふりかかったのは、おかしな終焉をとげた記憶の破片。

一人、
最後の巫女が残した恋心が縄を切った。
三人が無惨に消えて、一人は自分を選んで、一人は門の外。
黄泉は再び零に還る。

二人、
双人(ふたり)が一つになるはずだった。
捕まったことによって、全ては壊れて消え去り、紅い蝶は誘う。
二人が脆く消え、二人(四人)は儀式を行った。

三人、
純粋な気持ちは鏡を割ってもなお、立ちきれぬ。
一つの過ちにそこは永久の眠りと化した。
体に刺青(傷)を負いながら、大切な人を呼ぶその聲は屋敷の奥へ。
此岸で彼岸を見送る四人の心に残るココロ(思い出)

少女の片目に宿る意識が彼女に見せた現実。

見えないけど、見える。
いないけど、いる。
わからないけど、わかる。
知らないけど、知っている。

それは少女の目を喰らい、その目へ力を与える。故に少女は心という情(こころ)を閉ざした。

傷付けたくなかったから。

やがて消えてゆく感覚、溶けてゆく記憶。
灯台に咲いてゆく月蝕は笑いかけ、仮面は己を隠して流れてゆく。


少女は束縛された四人、
長い記憶と意識の形。

異なる片目は終わらない呪いと力の表れ。


狐面の向こうの顔は、窺えず。
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あの日―

まさか、あんな日になってしまうなんて思わなかった。


***

当時、まだ刑事だった霧島長四郎は朧月館の中庭にいた。
朧月神楽の事件以来、すっかり島には観光客はなくなった。
それとどこか、島に活気が無いのはそのせいだろうか。

ぼんやりと、長四郎は考えに耽っていた。

すると、視界に小さな人影が入った。
見ると何やら数本の花を手に歩いてゆき、中庭の隅に生えている木の根本でしゃがみ、動かなくなる。
「どうしたんだ?」
長四郎が歩みよって話しかけると、あからさまに驚いたらしく、ころんだ。
流歌たちと同じくらいで眼帯をして、少し中性的な子供だった。
「す、すまない。」
長四郎が慌てて謝ると、子供はぶんぶんと首を横に振った。
「大丈夫です。」
そう言うと、付いた土をぱたぱたと払う。
「これは…何のお墓かな?」
長四郎の目に改めて写った、墓標であろう木片が刺さり少しだけ他より土が盛り上がった墓。
「カナリアです。…以前、友達が飼っていた子なんです。」
「そのお友達はどうしたんだい?」
「本土に、渡りました。」
子供が少し悲しそうに言い、
「だから、代わりです。」
と続けた。
「そうか。」
長四郎は子供に笑いかけて頭を撫でてやった。
子供は嬉しそうに、でも少しだけ不器用に笑った。


その時だった。

「わぁぁ!!無苦の日だっ、あいつが来る!!」
「逃げろっ!!咲きたくないっ…咲きたくないぃぃっ…」
中庭にいた人が叫びながら大急ぎで逃げてゆく。

「何だ?」
長四郎が声のした方を見ると、地下に続く階段から、誰かがゆっくりと上がってくる。
「きゃぁぁぁ!!」
叫んだ女性は顔を押さえながら倒れた。

一瞬、顔が崩れたように見えた。

「おじさん、走って!」
子供が長四郎の手をつかんで引っ張る。
言われた通りに長四郎は走り始めた。
後ろをちらりと振り返ると顔が靄がかったように崩れた女性がゆっくり歩いているのが見えた。

無我夢中で走る中、気が付いた事があった。
逃げている、方向。
子供は逃げる人間達とは反対方向に走っている。

そしてたどり着いたのは、観光客のめっきり減ってしまった船の停泊所。
待合室で長四郎は腰を下ろした。
全力疾走で体が酸素を求めている。
「はぁ……はぁ……」
子供も同じだった。

「…島民と、逃げる方向が違ったな。」
息の整ったところで、長四郎が言った。
「たぶん、あっちは海岸です……もしくは、昔逃げ込んだ人が助かった場所に向かったのかと。」
「昔…?」
子供の言った言葉に長四郎は引っ掛かった。
「昔も、無苦の日(この日)があったらしいです。……その時は洞窟の入りくんだところに逃げて生き延びた人がいたみたいです。」
子供はやけに大人びた言葉遣いで説明した。
「じゃあ……」
「もしかしたら、助からないかもしれない……。」
子供が呟いた。
「あの地下から上がってきた女性は誰か知っているか?」
長四郎は気になっていたことを聞いた。
この子供は、それすらも知っているだろうと長四郎の何かが告げていたから。
「……灰原朔夜さんです。」
子供は悲しそうに、その答えを述べた。

―灰原。
その単語を聞いた瞬間、長四郎は灰原耀のさまざまな犯罪の意味がわかった気がした。
たぶん、それが正解なのだ。


話をしていたら、待合室の壁に付いていた鏡に、あの女性が写る。
「っ!」
子供はどこから出したのか、狐の面を強制的に長四郎に付けた。
「な…!?」
一気に狭くなる視界。
「走ってください、早く!」
立ち上がって、引っ張られるままに長四郎は再び走り出す。

朔夜という女性は歩いているのに追い付かれてしまいそうな感じを受けた。

船の警笛が鳴る。
出港の合図だ。
子供は離れ始めた船と島を繋ぐ橋まで走ると、子供は思いきり長四郎に突っ込んで体で突き飛ばした。
勢いで長四郎は船の甲板に叩き付けられる。
「っ……おい!」
一瞬息が詰まり、むせてから長四郎は狐の面を外して叫んだ。
子供はやはり不器用に、さらに悲しそうな笑みを浮かべて手を振った。

眼帯をしていた筈の片目は違う色をたたえていた。
長四郎が自分の指先を見ると、その子供の眼帯が絡まっている。
どうやら、突き飛ばされたときに引っ掛かって取れてしまったらしい。

朔夜が子供の近くまで来て、子供は長四郎からその人に向き直り………、

その場に倒れた。

朔夜は船を見たが島からは出られないのか、方向を変えて歩き出す。

***

船はどんどん島から離れてゆく。

あの子供は俺を助けてくれた。
万が一、"咲かない"ように面まで付けて。
長四郎は思い出したことがあった。
流歌の母親、小夜歌が言った言葉。
『あの子を連れて行けたらよかった』
長四郎がそれは誰か?と尋ねたら、小夜歌は『狐の面を持った眼帯の子』だと言っていた。
まさか……

結局、灰原は見付けられなかった。しかし、きっと島にいた。
この勘は間違いじゃない。

この島はどうなってしまうのだろう。
咲いた島民達はどうなるのだろう。

長四郎は狐の面を片手に持ったまま水平線に沈んでゆく島にそんな疑問を抱えていた。


***

「、ということがあったんだ。」
長四郎は長い長い話を終えた。
「そうだったんですか…」
長四郎の傍らでずっとそれを聞いていた女性が呟く。
目線の先には狐の面がかけられていた。

「あき、どう思う?」
「?」
怪訝な顔で彼女は長四郎の言葉を待つ。
「どうして…あの子は俺を助けたんだろうな?」
普通、パニックに陥れば人間というものは自分の事しか考えられなくなる。
「わかりません。………けど、」
あきは言葉を切った。
「?」
「けど、あたしは長さんを助けてくれたその子に感謝してます。」
その言葉に、長四郎はふ、と笑いを溢した。
「同じだな。」

俺も、感謝している。





どこでもあって、どこでもない。
幾億の人間達の小さな世界が作り上げた大きな世界を包み込むように枝葉を広げた世界樹が存在する所。

その集合体に古い雰囲気の洋館が佇む世界が小さく一つ。
まるで中世の建物をそのまま移してきたような洋館に、庭園が広がる綺麗でのどかな空間。
そんな洋館のある部屋でシルクハットをやや目深に被った少年がピアノの前に座っていた。
指先が奏でる曲はどこか寂しい音を響かせ空気に溶ける。

「屡季。」
不意に彼を誰かが呼んだ。
屡季と呼ばれた少年がくるりと声のした方を向くと、青を基調とした服を身に纏った少女―蒼星石が立っていた。
「どうしたのですか?」
怪訝そうに屡季は聞く。
「君が何の為に戦っているのか聞きに来たんだ。」
姉妹同士が刃を交える『宿命』という名前の戦い、アリスゲーム。
屡季にアリスの資格は無い。けれども彼は戦っている。
蒼星石も何度か危ない所を助けてもらっていた。
そして、それ故に持つ疑問点。

「……失うのが、嫌だから。」
屡季はやや間を置いて問掛けに答えた。
「屡季は翠星石と同じ考えなのかい?」
「どうでしょうね。……唯、両手に抱えられるものは限られていて段々とその抱えているものを落としてしまいます。ボクはそれを全部抱えたままでいたいのかもしれません。」
屡季は苦笑いを溢したが帽子に隠れて目の表情まで窺い知ることはできなかった。
「そうやって抱えるから、自分のことを棚の上にあげてしまう。」
「では、逆も然りですね。」
屡季がそう返した。
「そうだね。」
蒼星石は微笑を溢す。

―僕もある意味同じなのかもしれない。

「でも、貴女のことは皆…主に翠星石が心配されてるみたいなので、無茶はしないほうがいいと思いますよ?」
「屡季が言うと説得力に欠けるね。」
「ボクは…いいんですよ。」

―何より大切なものを両手から落としてしまったのだから。

「さて、」
屡季は立ち上がった。
蒼星石は怪訝そうに屡季を見る。

「お茶にしましょうか。」
微笑を浮かべて彼が言った。




彼女はつくづく月が似合うと思う。

円香はぼんやりとそう考えていた。
朧月館にいたときも、よく思った記憶がある。

そう思われている当の本人は床に横たわって眠っている。
ちょうど月明かりが窓からさしこむ位置なので、光が彼女の薄目の色素を持つ髪に当たって別の色に見える。
あのときと同じで円香はくすりと笑った。

しかしながら、夢見心地はよくないみたいで先ほどからうなされている。
円香にはそれをどうすることもできなくて、ただ側にいることしかできなかった。

「……、消えた……」

時折のうわ言。
眉間にしわがよる。

「祐、」
円香が心配そうに名前を呼ぶが、答えはない。

「……傷付ける、…」

辛そうに声をあげる。
その一言に、円香はあることを思い出した。



亜夜子ちゃんがいつもみたいに鋏を振り回して、高笑いしながら私に近付いてきた時に
「何を、している?」
たまたまここに入院することになっていた彼女が間に入ってくれた。
私は傷付かなくて済んだ。
だけど、彼女のつけていた眼帯はまっぷたつになり、その皮膚も切れて血がでていた。

「邪魔しないでよ。」
亜夜子ちゃんが怒った顔で言ったが、
「ふふっ…、綺麗な色。」
少しずつ滲み始めた赤い滴を見つめて亜夜子ちゃんは、にやり。と不気味に笑う。

何かを聞き付けてばたばた走ってきた看護婦さんたちが亜夜子ちゃんを叱る。
鋏を取り上げられて不機嫌な顔した亜夜子ちゃんが渋々去っていく。

「怪我は?」
怪我してるのは自分だというのに。
ぶるぶると小動物みたいに震える私に聞いた。
私が首を左右に振ると、よかった。と笑う。
なんだかしばらく笑ってない人が笑ったようなぎこちない感じだった。

「ごめんなさい。」
「?」
彼女は首を傾げる。
わかっていない。
「その……」
円香が指差した先を辿ってまっぷたつの眼帯を見つけた彼女は目に手を当てて初めてそれに気が付いたらしい。
「あぁ、気にしなくていい。」
「でも……」
「慣れてるから、大丈夫。」
不思議だった。
何故慣れているのか。
「?」
首を傾げていると、ガーゼとか消毒液を持った椿さんが現れた。
「円香ちゃん、怪我してない?」
やさしい口調の椿さんの問いに私は首を振った。
「だいじょうぶ」
「そう、よかった。」
椿さんは笑って頭を撫でてくれて、彼女の方に行く。
「目を開けてくれる?」
それに彼女は大分躊躇っているようでなかなか言うことを聞かなかった。
「目も怪我してたら、これじゃ手当てできないから。ね?」
椿さんがそう言うと、仕方なく、という風に彼女は目を開いた。
何故躊躇っていたのか、すぐに理解した。

彼女の、目。

眼帯がつけられていた方の目はもう片方と違った色をたたえていた。

今までそれで何かあったのかもしれない。

「よかった、目は怪我してないみたい。……眼帯取ってくるわ。」
安堵の表情をした椿さんは新しい眼帯を取りにぱたぱたとその場を後にした。
彼女はきょとんとした表情で椿さんを目で追っていた。
「変でしょ?……昔からなんだ。」
自潮したように彼女は私に言う。
「……そんなことないよ。わたし、きれいだとおもうよ、め。」
本当に、そう思った。
「初めて言われた。」
また、ぎこちなく笑った。

眼帯を持った椿さんが帰ってきて彼女につけてあげる。

「円香っ!」
海咲もいた。
椿さんに聞いてきたみたい。
「けがは?何もされなかった?」
「う、うん。わたしはだいじょうぶだよ。」
そういうと海咲は安心したらしい。
亜夜子ちゃんにぶつぶつ文句を言っていた。

そのまま海咲に手を引かれて、振り返ったら彼女は小さく手を振ってくれた。



「う……」
回想に耽っていた円香をその小さい声が引き戻す。
ぼんやり開いた目が円香のそれとあった。
「嫌な夢でも見たの?」
うなされていた。と告げると、いつもなら"うん。"だけで済ましてしまうのに、今日はなんだか違っていた。
「遠い夢。」
「遠い?」
「そう。…女の子が二人、村に迷いこんでしまって、なんとか脱出できたけど、もしかしたら傷付けてしまうかもしれない、だからその射影機で写せ、って最後には言う。
……もう、何度目かな。」
簡略された説明に募る疑問。
「何度も見てるの?」
その問いに彼女は首を縦に振った。
「これだけを、じゃないけどね。」
そう言ったあとに眼帯を触った。今、表情には出ていないけど到底自分にはわからないものだと感じた。
「まだ、嫌い?」
「少し。けど、円香が好きだと言ってくれたから、前ほど嫌いではないよ。」
円香は彼女の顔に手を伸ばしてするり、と眼帯を外す。

薄く傷の残った瞼の奥にある目がたたえる色は昔と変わらない。

「大丈夫。大丈夫だから。」
呟いた言葉は彼女の癖。
きっと傷跡のことを気にしたのかもしれない。
そうじゃないかもしれない。
けれど、どちらにしろ
「そうやって、すぐに隠す」
「?」
ぶすくれて言ったが、祐は何が?と言う風でやっぱり無意識。
「辛いことも苦しいこともみんな隠しちゃう。」
「……。」
「それなのに、いろいろとお見通しなんだもん。」
円香もわかりたかった。
彼女のくすぶる気持ちを。
少しでも、笑っていられるように。
「……じゃあ、もう少ししたら、言う。…どこから説明したらいいかわからない。」
彼女は言葉にするのがあまりうまくないのも変わらなくて。
「うん、待ってる。」

仰向けの彼女の頭を撫でていると、眠くなってきたのか、目をごしごしとこする。
「眠い?」
頷いた彼女を床よりもベッドのほうがいいだろうと強制的に動かした。
また頭を撫でると祐は私の袖を掴んだ。
「…一人、怖い。」
「うん、傍にいるよ。」


おやすみ、
※ネタバレを含んでいるため、ご了承ください。










少女が夢としたあの日。

宿る旧文明の民が語った真実は、それを無惨にも打ち砕く。

***

「海底レリクスで起こった事は、全て現実のことなのです。」
重々しく、ミカは言う。
肯定した事実を否定する現実。
「じゃあ……じゃあ、ルイはあの時本当に死んじゃってたの?」
エミリアは信じられない、という感じで聞いた。
「本当です。彼は自律起動兵器に体を砕かれ、一度は完全なる死を迎えました。」
「うそよっ!!……じゃあ、どうしてルイは目の前にいるの…」
エミリアは事実を受け入れたくないらしい。
当たり前である、自分のために誰かが死んだということはエミリアにとって受け入れがたい事だから。
「私のプログラムで彼の体を再構築しています。だから、私の姿を彼も認識出来るのです、」
ミカがそう言うと、エミリアはルイの方を向いた。
「どうして…?どうして助けたりしたの?……赤の他人だよ?」
泣きそうな声で、エミリアが聞いた。
「何か出来たかもしれないのに、何もしなかったら絶対後悔すると思ったから。」
「でも、あたしなんかをかばってあんたは死んじゃったんだよ?」
「そうだけど、その時、エミリアが強く願ってくれてミカがプログラムを注入してくれて、今ここにいる。」
ルイが言うこともまた事実。
「うー…」
「"生きてる"から、大丈夫。」
ルイがそういうと、
「……もう、あんたはきゅーきょくのお人好しすぎ!」
エミリアは腰に手を当て、いつものポーズ。

それを見てルイは少し笑った。
「あ、ちょっと、何笑ってんのよ。」
ぶー。とぶすくれたエミリアも次には笑った。

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楽な方向に流れやすい。
勉強は嫌い。
音楽を聴いてる事や寝てたりゲームしたりする事に幸せを感じている。

連載は挫折しやすい事を知り、短編をざかざかと書こうと決め、チマチマ更新予定。
リア友に教えちゃったから、あんまり変なのは載せないようにしてる。
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